神流町を流れる神流川は、昔はたくさんあった自然石を人間が持ち出したことやコンクリートで工事したことなど、さまざまな理由から流れが速くなり、淵も瀬もなくなったため魚たちも棲みにくくなっていましたが、伝統的な「石積工法」で川を再生しようという気運が高まり、現在数箇所のポイントで完成し(上記写真は一例)、着実に効果が上がっています。
石積工法とは
「石積工法」は「石丸積工法」ともいい、コンクリートなどを使用せずに石を垂直に積む工法で、水の浄化を助け、微生物をはじめとする川に生息する生き物たちの生態系にとても良い理想的な工法で、石の産地であったこの地域に昔から伝わる伝統的な工法だそうです。
石の役割
護岸工事などで川に石などがなくなると、淵や瀬などの、水の流れの変化するところがなくなります。すると川の流れが速くなり、温まるポイントがないため水温が低いまま流れ、水温に敏感な川魚たちは棲みにくくなります。また、産卵などのさまざまな活動をするところも無くなり、エサもできにくく、ますます棲めなくなっていきます。
さらに、天敵の鳥たち(川鵜など)にも狙われやすくなり、隠れる場所もないため簡単に捕らえられてしまいます。
ところが、川の中に石を効果的に配置することで、淵や瀬が生まれ、淵では水温が上がり水棲生物たちにとってかっこうの活動場所が生まれます。また、天敵の鳥から逃れることも容易になり、さまざまな意味で棲みやすい環境ができます。
ほかにも、水が石の間を抜ける際に浄化が進むというメリットもあるようです。
魚たちの復活
神流川は、昔は鮎釣りで有名だったそうですが近年は鮎をはじめとした魚たちがいなくなり、すっかり下火になっていたそうです。
しかし、石積工法に変えてから着実に魚たちが戻りはじめ、現在ではかなりの魚が釣れるようになり、近隣はもとより遠方からもわざわざ鮎釣りに来る方が増えるほど魚たちが戻ってきました。
また、以前は川鵜たちが食べたい放題だったものが、石のおかげで隠れ場所ができて随分逃げられるようになっていることも増えてきた理由です。
全国でも珍しい淡水の水産コース
神流町の万羽高校には、全国でも珍しい淡水の水産コースがあり、神流川での生態系の変化も細かく調査しているそうです。これらのデータは、川の管理が水棲生物たちへ与える影響を知る上で貴重なものといえるでしょう。
自然に戻す
石積工法は、言ってみれば自然な川の流れを人工的に作る方法と言えるものです。ですので当然さまざまな約束事や気をつけるべき点があり、それらを踏まえて施工をしないと大量の雨が降ったときには土石流で巨石ですら崩れて流れてしまうこともあるそうです。
しかし、組み方の約束事さえしっかり守れば崩れることはなく、川本来の機能を十分に働かせつつ、石が崩れない組み方を実現できるのが石積工法の素晴らしい点だといえます。
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瀬割り作業

制水工床堀作業

石組み作業

上流制水工完成

翌5月の上流制水工付近のウグイ産卵状況
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